☆「今月のプロブレム」、5月分の中級篇は、解答数が9通と少し減りました。いつもよりほんの少し難しいのが災いしたのかもしれません。
☆本欄ではキング=K、クイーン=R、ルーク=R、ビショップ=B、ナイト=S、ポーン=Pという表記を用いています。プロブレムでは、ナイトライダーというフェアリー駒にNの文字を当てるのが普通で、そのためナイトはSと表記する慣習になっています。
中級1Karl K. A. LarsenSydsvenska Dagbladet Snällposten 1923 1st HM #2
White Ke5 Qa8 Rb4 Bf7
Black Ka1 Ba7 Sc8 Pe4
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井上聡美:Kだってすぐにわかりました! ☆もうすっかりプロブレムに慣れましたね! かめきち:なぜKf6じゃダメなのかわかるまでに悩みました。盤面は広く見ないとダメですね。 服部卓磨:1…Sb6 2…Sa5!の2段とびのうけがなかなか見えませんでした。 ☆そういうわけで、1.Kf6?なら1…Sb6!で逃れます。 Relax:Qh1やQh8が見えにくい。 藤原俊雅:2つのcorner-to-corner move。 及川弘典:corner-to-cornerが気持ちいい。 ☆隅っこにいるQを別の隅っこに大きく動かすのは、昔から好まれているテーマです。 たくぼん:唯一邪魔にならない位置がf4。Qa8が変化で横に斜めに活躍するのは気持ち良い。 神在月生:僧縛り 騎士と歩兵は ご自由に |
中級2Erich ZeplerStern 1965 #3
White Kc1 Qe1 Rd2 Pc2
Black Ka1 Sc4 Pa2
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かめきち:うーん。これが自信ないです。難しい。黒のPa2がb1に効きつつステイルメイトを誘っているのが絶妙で……。 ☆おっしゃるとおり、黒はステイルメイト狙い。b2に跳ねてくるSをピンしてしまうと、ステイルメイトになってしまうので、それを未然に避ける1.Rd4!が狙いです。 Relax:チェスにもあったブルータス手筋。 ☆そのとおりで、プロブレムと詰将棋では、親戚関係にある手筋がたくさんあります。その根本は、ステイルメイトと打歩詰。 井上聡美:どちらが本手順か変化かがわかりませんでした。 ☆1…Sd2が変化手順になりますが、解答競技ではそういう変化も書いておく必要があります。 藤原俊雅:d2Rの移動先が限定されるということはバッテリー形成しかない、というズルい考え方をしました(笑)。 ☆解が1意に定まるからこの手が正解なはず……というのは、プロブレムと詰将棋に共通する解法の裏定跡です。 たくぼん:最後Sが動いても全て取ってチェックメイトは面白いですね。 及川弘典:絶妙な地点に移動するwR。 |
中級3Kazuo WatanabeProblem Paradise 2006 H#2
White Kd4 Rh4 Bg1 Sa4b6
Black Ka5 Rb1c8 Be8 Pa6d6
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かめきち:一つわかれば両方わかる感じ。二つ解があるのがむしろ美しい。これが一番すぐにわかりました。 ☆その感じがわかっていただければ、もう立派なヘルプメイトの愛好者です。 たくぼん:全ての動きが対比になっているのに感動。特にwKの上下には唸りました。 藤原俊雅:シンプルなコントラスト。この作者の好作は、青のKKさんのnoteに纏められているので是非。 及川弘典:完璧な対照性。 |
中級4A. A. TroitzkyDeutsche Schachzeitung 1911 Win
White Kh7 Qg4 Sf4
Black Kf6 Qf8 Pf7
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☆驚いたことに、これで黒のQは助かりません。直接的には、3.Sd7+のフォークを狙われていますが、 2…Kd6 3.Qb4+ 2…Qb8 3.Qg3+ 2…Qe8 3.Qe2+ でどれも串刺し(skewerと言います)。 ☆最強の抵抗は2通り。 2…Qd8 3.Sc4+ Kd5/Kf6 4.Qd1+/Qh4+ 2…Qe7 3.Qe2+ Kd6/Kf6 3.Sc8+/Sd5+ やはりQが落ちてしまいます。他の受けもSのフォークがかかることをご確認ください。 ☆Qの動きをSで抑えることができるという好例。こういうテーマを「支配」(domination)と呼び、エンドゲーム・スタディでは頻出のテーマのひとつです。憶えておいてください。 服部卓磨:白のキングの位置が、黒のQは右にいけない配置になっているので、チェックをかけずに、黒のQが動いても、Qはとれる手が正解だろうという予想にはすぐに至ったのですが、白のQを動かす手ばかりを考えてまして、なかなか正解にたどりつけませんでした。にしても、これでつかまっているとは、すごいですね。 ☆チェス盤に眠っている奇跡! Relax:ナイトはすごい駒ですよね。良問。 かめきち:どこまで行っても王手飛車。これは気分がいい。 藤原俊雅:2.Sb6が悠長な手に思えて相当指し辛かった。 たくぼん:遠ざかるようなSb6で全て掴まっているとは驚きです。 |
【総評】
かめきち:脳内盤が動くレベルではないので、今回から盤駒を買って参戦しています。詰将棋的な感覚だとなんか邪道な気がするのですが、これはズルではないのでしょうか。ポーンは向きがないので、黒ポーンが上方向に行けるかのようにしばらく誤信していました。
☆もちろん、盤駒を使っていただいてもかまいません。というか、解答競技会で、盤駒を使わずに解いている人を見たことがありません。プロブレムには詰将棋とはまた違った独特の複雑さがありますので、脳内ですべて完結させるのは至難の業です。
藤原俊雅:他は易しいですが④には苦労しました。指しチェスの人なら簡単なのでしょうね。
Kawasemi:2番目と4番目が難しかったです。
服部卓磨:3問目が解けませんでした。エンドゲームが面白かったです。また来月も挑戦します。
☆お待ちしています!
【解答成績】
☆採点は、1題5点満点として、ISC方式で採点しました。
20点ーーたくぼん
17.5点ーー藤原俊雅、かめきち、及川弘典
15点ーーKawasemi、井上聡美、服部卓磨
10点ーーRelax
5点ーー神在月生
(解答到着順)
☆満点はたくぼんさんお一人だけでした。
☆解答応募者の中から、かめきちさんに、JCPS発行のプロブレム書籍を賞品としてお送りします。