☆「今月のプロブレム」、7月分の初級篇は、解答数が8通と減少しました。この欄を続けているのは、新しい解答者の歓迎が第一目的ですので、1題でも解けましたらぜひご応募ください。
☆本欄ではキング=K、クイーン=R、ルーク=R、ビショップ=B、ナイト=S、ポーン=Pという表記を用いています。プロブレムでは、ナイトライダーというフェアリー駒にNの文字を当てるのが普通で、そのためナイトはSと表記する慣習になっています。
初級1Philip H. WilliamsBirmingham Post 1890
White Ke6 Qg4 Bc5f3 Pb4
Black Kb5
#2
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井上徹也:Ka4の対策を考えたら初手が浮かびました。 ☆黒から指し始めると仮定すると、1...Ka4にはメイトが存在しません。逆に考えると、1...Ka4のときにメイトを準備するような初手を探すことになります。そういう道筋でキーが見つかってしまうので、現代の#2ではこういうメイトの用意されていない黒の着手(これをunprovided flightと呼びます)は作品のキズになると考えられています。 及川弘典:レーザービームで刺す。 たくぼん:じっとQh3が深い着手。Qg3との差異もいい。 ☆1.Qg3?なら1...Ka6!で逃れ。 |
初級2William A. ShinkmanOffiziers-Schachzeitung 1905
White Ke4 Qb5 Ba5
Black Kc8
#3
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服部卓磨:一番苦戦しました。Bb6ばかり考えてました。 中嶋正和:非常に時間がかかりました。このような問題が一番しんどい。 ☆どうやら、これが今回の最難問だったようです。 ☆このままではステイルメイト。そこでKの退路を作ってやりながら、あとのメイト形を模索することになりますが、1...Kd7 2.Qe5!とする形を見つけるのには多少時間がかかるかもしれません。そして、その形を得るために、1.Qb2!が意外なキーになります。 及川弘典:初手Qe5はKb7でダメなんですね。 たくぼん:e5地点が絶好の場所でした。 井上徹也:Qの制空権の大きさに驚きです。ヒントがなかったら分からなかったかも。 |
初級3Aurél M. KárpátiBudapesti Sakkszövetség 1999
White Kc6 Qa2 Sg1
Black Kd4 Pe2
H#2 3 sols.
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井上徹也:3種成だろうと思いつつも手順を確定するのに少し苦労しました。2手ヘルプの黒にQ成なし。 ☆見ただけで、Pが3通りに成るとわかった人は、もう初級を卒業しています。 ☆井上さんのおっしゃるとおり、H#2の黒にはQへのプロモーションが理屈として出てきません。なぜかといえば、Q成とR/B成を区別するためには、成ったQがRの方向とBの方向に動く必要があり、それで3手になってしまうからです。解くときの裏知識ですね。 及川弘典:3種成。シンプルな構成で愛らしい。 服部卓磨:3種のアンダープロモーションに対してQが全く違う場所に行くのがすごくきれいですね。 たくぼん:お見事な3種成コンパクトな詰型がきれいです。 |
初級4Michael McDowellIdeal-Mate Review 1986
White Kf3 Sg2
Black Kd1 Qd2 Sc1
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井上徹也:これはカメレオンエコーという形式かしら。 ☆2つの詰め上がりが色違い(たとえば1路ずれ)になっているのをカメレオン・エコー(chameleon echo)、同色(たとえば斜めに1マスずれ)になっているのをモノクローム・エコー(monochrome echo)と呼びます。いずれもヘルプメイトの基本概念です。 及川弘典:エコーメイト。さらりと場所交換が行われている所もいいですね。 たくぼん:詰上りが1路ずれとは面白い趣向ですね。 井上聡美:「自動的」という程ではないけど、確かに「ほぼ自動的」にわかりました。ヘルプメイトはやっぱりおもしろいです。 |
【総評】
井上聡美:先月の上級編と比べて、初級編は解きやすかったです。次回の初級編はみんなに解いてもらいたいです。
☆わたしが言いたいことを、聡美さんに先に言われてしまいました!
【解答成績】
☆採点は、1題5点満点として、ISC方式で採点しました。
20点ーー井上徹也、及川弘典、Kawasemi、服部卓磨、中嶋正和、たくぼん、井上聡美
0点ーーRelax
(解答到着順)
☆ほぼ全員が満点という好成績でした。
☆解答応募者の中から、及川弘典さんに、JCPS発行のプロブレム書籍を賞品としてお送りします。