「今月のプロブレム」2023/07解答

☆「今月のプロブレム」、7月分の初級篇は、解答数が8通と減少しました。この欄を続けているのは、新しい解答者の歓迎が第一目的ですので、1題でも解けましたらぜひご応募ください。
☆本欄ではキング=K、クイーン=R、ルーク=R、ビショップ=B、ナイト=S、ポーン=Pという表記を用いています。プロブレムでは、ナイトライダーというフェアリー駒にNの文字を当てるのが普通で、そのためナイトはSと表記する慣習になっています。

初級1

Philip H. Williams
Birmingham Post 1890
White Ke6 Qg4 Bc5f3 Pb4 Black Kb5
#2
1.Qg4-h3 ! zugzwang. 1...Kb5-a4 2.Bf3-c6 # 1...Kb5-c4 2.Bf3-e2 # 1...Kb5-a6 2.Qh3-f1 #
井上徹也:Ka4の対策を考えたら初手が浮かびました。
☆黒から指し始めると仮定すると、1...Ka4にはメイトが存在しません。逆に考えると、1...Ka4のときにメイトを準備するような初手を探すことになります。そういう道筋でキーが見つかってしまうので、現代の#2ではこういうメイトの用意されていない黒の着手(これをunprovided flightと呼びます)は作品のキズになると考えられています。
及川弘典:レーザービームで刺す。
たくぼん:じっとQh3が深い着手。Qg3との差異もいい。
☆1.Qg3?なら1...Ka6!で逃れ。

初級2

William A. Shinkman
Offiziers-Schachzeitung 1905
White Ke4 Qb5 Ba5 Black Kc8
#3
1.Qb5-b2 ! zugzwang. 1...Kc8-d7 2.Qb2-e5 zugzwang. 2...Kd7-c6 3.Qe5-d5 # 2...Kd7-c8 3.Qe5-c7 #
服部卓磨:一番苦戦しました。Bb6ばかり考えてました。
中嶋正和:非常に時間がかかりました。このような問題が一番しんどい。
☆どうやら、これが今回の最難問だったようです。
☆このままではステイルメイト。そこでKの退路を作ってやりながら、あとのメイト形を模索することになりますが、1...Kd7 2.Qe5!とする形を見つけるのには多少時間がかかるかもしれません。そして、その形を得るために、1.Qb2!が意外なキーになります。
及川弘典:初手Qe5はKb7でダメなんですね。
たくぼん:e5地点が絶好の場所でした。
井上徹也:Qの制空権の大きさに驚きです。ヒントがなかったら分からなかったかも。

初級3

Aurél M. Kárpáti
Budapesti Sakkszövetség 1999
White Kc6 Qa2 Sg1 Black Kd4 Pe2
H#2 3 sols.
1.e2-e1=S Qa2-e6 2.Se1-d3 Sg1-e2 # 1.e2-e1=R Qa2-b3 2.Re1-e4 Sg1-f3 # 1.e2-e1=B Qa2-e2 2.Be1-c3 Sg1-f3 #
井上徹也:3種成だろうと思いつつも手順を確定するのに少し苦労しました。2手ヘルプの黒にQ成なし。
☆見ただけで、Pが3通りに成るとわかった人は、もう初級を卒業しています。
☆井上さんのおっしゃるとおり、H#2の黒にはQへのプロモーションが理屈として出てきません。なぜかといえば、Q成とR/B成を区別するためには、成ったQがRの方向とBの方向に動く必要があり、それで3手になってしまうからです。解くときの裏知識ですね。
及川弘典:3種成。シンプルな構成で愛らしい。
服部卓磨:3種のアンダープロモーションに対してQが全く違う場所に行くのがすごくきれいですね。
たくぼん:お見事な3種成コンパクトな詰型がきれいです。

初級4

Michael McDowell
Ideal-Mate Review 1986
White Kf3 Sg2 Black Kd1 Qd2 Sc1
1.Sc1-e2 Sg2-h4 2.Kd1-e1 Kf3-g2 3.Qd2-d1 Sh4-f3 # 1.Sc1-b3 Kf3-g3 2.Qd2-c1 Kg3-f2 3.Sb3-d2 Sg2-e3 #
井上徹也:これはカメレオンエコーという形式かしら。
☆2つの詰め上がりが色違い(たとえば1路ずれ)になっているのをカメレオン・エコー(chameleon echo)、同色(たとえば斜めに1マスずれ)になっているのをモノクローム・エコー(monochrome echo)と呼びます。いずれもヘルプメイトの基本概念です。
及川弘典:エコーメイト。さらりと場所交換が行われている所もいいですね。
たくぼん:詰上りが1路ずれとは面白い趣向ですね。
井上聡美:「自動的」という程ではないけど、確かに「ほぼ自動的」にわかりました。ヘルプメイトはやっぱりおもしろいです。

【総評】
井上聡美:先月の上級編と比べて、初級編は解きやすかったです。次回の初級編はみんなに解いてもらいたいです。
☆わたしが言いたいことを、聡美さんに先に言われてしまいました!

【解答成績】
☆採点は、1題5点満点として、ISC方式で採点しました。
20点ーー井上徹也、及川弘典、Kawasemi、服部卓磨、中嶋正和、たくぼん、井上聡美
0点ーーRelax
(解答到着順)

☆ほぼ全員が満点という好成績でした。
☆解答応募者の中から、及川弘典さんに、JCPS発行のプロブレム書籍を賞品としてお送りします。