「今月のプロブレム」2023/06解答

☆「今月のプロブレム」、6月分の上級篇は、解答数が11通でした。新規の解答者を待望しています!
☆本欄ではキング=K、クイーン=R、ルーク=R、ビショップ=B、ナイト=S、ポーン=Pという表記を用いています。プロブレムでは、ナイトライダーというフェアリー駒にNの文字を当てるのが普通で、そのためナイトはSと表記する慣習になっています。

上級1

Gerald F. Anderson
The Chess Amateur 1923
White Ke1 Qa7 Ra1 Sf4 Pc2f2 Black Kg1 Rh1 Sb6 Pb7c3f3h2
#2
1.Ra1-a6 ! zugzwang. 1...Sb6-a4 2.Ra6-g6 # 1...Sb6-c4 2.Ra6-g6 # 1...Sb6-d5 2.Ra6-g6 # 1...Sb6-d7 2.Ra6-g6 # 1...Sb6-c8 2.Ra6-g6 # 1...Sb6-a8 2.Ra6-g6 # 1...b7*a6 2.Qa7-g7 #
Relax:キャスリングは囮ですか(笑)
井上徹也:1手パスしてキャスリングの筋がちらつきましたが考えすぎでした。
☆黒から指す、set playをまず考えると、1…S~ 2.0-0-0#という、キャスリングでメイトにする順があります。しかし、これはQa7がf2に利く場合に成立するので、このset playをそのまま保存する手はありません。
☆1.Qb8? Sc8!
1.Qxb7? Sd7!
1.Qa5? Sd5!
という紛れにもご注意ください。
☆setにはすべてメイトが用意されていて(complete block)、そのset playが本手順では別のメイトになるようなものを、mutateと呼びます。
服部卓磨:白のRがa1にある意味を考えたら、白のKが絶対に動けないので、Rを動かすしか意味をもたせられないことに気づきました。
たくぼん:ステイルメイトにならないように、Sb6がどこへ動いてもいいように攻める。
藤原俊雅:初形にあるRoyal batteryは使えないので紛れに乏しい。
及川弘典:QとRの横の利きが開通。
かめきち:これしか思いつかないんですが、あんまり合っている感触がないです。
神在月生:さぁどうだ 取れるものなら 取ってみろ

上級2

Erich Brunner
Alpine Chess 1921
White Kf6 Rd4 Bf2 Sb6g5 Black Kh8 Rg7 Sb2 Pf7g6
#3
1.Sb6-a4 ! threat: 2.Sa4*b2 zugzwang. 2...Rg7-g8 3.Rd4-h4 # 2...Rg7-h7 3.Rd4-d8 # 2...Kh8-g8 3.Rd4-d8 # 1...Sb2-d1 2.Rd4*d1 zugzwang. 2...Rg7-g8 3.Rd1-h1 # 2...Rg7-h7 3.Rd1-d8 # 2...Kh8-g8 3.Rd1-d8 # 1...Sb2-d3 2.Rd4*d3 zugzwang. 2...Rg7-g8 3.Rd3-h3 # 2...Rg7-h7 3.Rd3-d8 # 2...Kh8-g8 3.Rd3-d8 # 1...Sb2-c4 2.Rd4*c4 zugzwang. 2...Rg7-g8 3.Rc4-h4 # 2...Rg7-h7 3.Rc4-c8 # 2...Kh8-g8 3.Rc4-c8 # 1...Sb2*a4 2.Rd4*a4 zugzwang. 2...Rg7-g8 3.Ra4-h4 # 2...Rg7-h7 3.Ra4-a8 # 2...Kh8-g8 3.Ra4-a8 #
☆黒のRg7に動いてもらわないとメイトがないので、白の方針としてSb2を取ってしまうのは絶対です。setにはメイトがすべて用意されているので、1手パスできればいいのですが、それは何かという問題。
服部卓磨:Sa4以外ですと、白のRがチェックできない方向に、黒のRがRg8またはRh7に動けてしまうわけですね。そのため、先に黒のRが動いてもらわないといけないのですね。面白かったです。
☆1.Sa8? Sa4!
1.Sc8? Sc4!
という紛れ順では、白のSが邪魔をして、2.RxS Rh7の後にメイトがありません。
たくぼん:動いたら次に取られるSb2なのにSb6を消しに行くSa4が不思議な手。
井上徹也:他にナイトを動かすとルークの邪魔になるわけですね。
藤原俊雅:邪魔になるくらいならむしろ取られたいwS!
及川弘典:Sc4はSa4で逃れ。wRの移動を妨げないよう注意する。
かめきち:b2のナイトが、b6のナイトの動きを真似をすればルーク筋がつぶれる? 作意はつかめた気がしますが、いまいち自信がないです。f2のビショップが何も仕事をしていない(どこに動かしてもルーク筋にかかってしまう?)のが気になります。
☆f2Bがないと、1.Rd2!の余詰が発生します。つまり余詰消しの駒ですが、
1.Be1? Sd1!
1.Be3? Sd3!
1.Bg1? Sd1!
1.Bg3? Sd3!
という、テーマに関わる紛れを生んでいて、一石二鳥の配置なんです。

上級3

Gennady Chumakov
Shakhmatnaya Kompozitsiya 1999
White Kc2 Rf7 Sf5 Black Kh8 Pf6g2g3h4
H#3 b) Kh8 -> g8
a) 1.g2-g1=R Sf5*h4 2.Rg1-h1 Sh4-f5 3.Rh1-h7 Rf7-f8 # b) bKh8-->g8 1.g2-g1=B Rf7*f6 2.Bg1-d4 Rf6-f7 3.Bd4-h8 Sf5-h6 #
かめきち:ヘルプメイト楽しいので挑戦。前回の中級もビショップ編とルーク編があったのでそれの応用で(たぶん)解けました。ルーク編のが見えづらかったです。
井上聡美:b)の方がわかりやすそうと思って先に解いてみました。チェックメイトの形が見てすぐにわかったので、すぐ解けました。逆にa)の方がすぐにはわからなかったです。
☆みなさん、ヘルプメイトにはすっかり慣れたみたいで、喜ばしいかぎりです。
井上徹也:小味ながらスイッチバックと成り分けが綺麗に表現されてますね。
及川弘典:wRとwSのスイッチバックがいい感じ。
服部卓磨:わざわざg1からKの近くまでいくのが面白いですね。
たくぼん:消えるPはどれなのかが大事ですね。面白かったです。
藤原俊雅:模範的な仕上がりなので1分で解けました。

上級4

Ayako Okaya
Problem Paradise 1999
white Rh1a1 Sg1b1 Bf1c1 Ke1 Qd1 Ph2g2f2e2d2c2b2a2 black Ph7g7f7e7d7c7b7a7 Rh8a8 Sg8b8 Bf8c8 Ke8 Qd8
1.g2-g3 f7-f5 2.Bf1-h3 f5-f4 3.Bh3*d7 + Sb8*d7 4.Sg1-h3 Sd7-e5 5.0-0 Se5-f3 + 6.Kg1-g2 e7-e5 7.Rf1-h1 Sf3-g1 8.Kg2-f1 f4-f3 9.Kf1-e1
井上聡美:おもしろそうと思って、一番最初に解きました。
服部卓磨:キャスリングがあることをすっかり忘れていました。はじめてプルーフゲームが自力で解けました。
かめきち:黒ポーン殺人事件! きっと解けるとの言葉を信じて挑戦しました。これすごく面白かったです。中学入試の算数か、昔のパズラーとかニコリみたい。理詰めで1手1手確定できるもんですね。これまた一題やってみたいです。
藤原俊雅:シンプルなuncastling! キャスリングの筋が全然見えずに困っていたら、高校の友達がキャスリングがじゃない?と教えてくれました(笑)。チェスのルールさえ分かっていれば解けるというのがPGの素晴らしさですね。
☆好評サクサク。proof gameの楽しさを味わってもらえたようです。
☆解き方を少しくわしく解説してみましょう。まず、問題図になるために、黒が最短で何手かかるかを調べると、Sb8がg1まで移動するのに4手、Pe7がe5に移動するのに1手、Pf7がf3に移動するのに3手で、合計8手かかります。
☆それからわかること。
Pe7-5(ダブルステップ)
Pf7-f5(ダブルステップ)-f4-f3
☆他の駒を動かす余裕がないので、Pd7はそのままの位置で取られています。
☆従って、Sb8の軌跡はSb8-d7-e5-f3-g1と決まります。
☆Pd7を取る駒はBと決まって、まず最初の入り方は
1.g3 f5 2.Bh3 f4 3.Bxd7+ Sxd7 4.Sh3(途中図)だとわかります。問題はその先です。
(途中図は4.Sh3まで)

☆白はあと5手指して、そのままの形にしなくてはなりません。つまりテンポ(tempo)を失う必要があります。
☆単独の駒でテンポを失うことができるのは、KとRです。
Kなら5.Kf1 6.Kg1 7.Kg2 8.Kf1 9.Ke1(または6.Kg2 7.Kg1)という、三角形を描く基本手筋(triangulationと呼びます)を使うとちょうど5手で戻ってこられますが、そのあいだに黒は4…Se4 5…Sf3 が絶対で、白はKg1を指すタイミングがありません。すなわち、これは失敗。
☆RならRh1→f1-g1-h1またはRh1-g1-f1-h1という順が考えられますが、5…Sf3+がチェックになるので6.Kf1という形になり、Ke1に戻すのは黒がSg1を指した後になるので、結局白はRf1を指すことができません。つまり、これも失敗。
☆そこで最後に残された手段がキャスリングということになります。
☆ということで、問題図はキャスリングをしていないように見えるが、実はキャスリングをした後でふたたびKとRを原形位置に戻す、anti-castlingというproof game特有のテーマを、テンポの意味付けで描いた作品です。
☆proof gameでは、手順前後が成立しないようになっているところにご注目ください。
井上徹也:偽キャスリングが第一感になってきました。
及川弘典:キャスリングの痕跡を消す。
中嶋正和:久しぶりにproof gameを解きました。anti-castling。
神在月生:キャスリング 手数短縮 味方なり
☆1.g3 f5 2.Bh3 f4 3.Bxd7+ Sxd7 4.Sh3 Se5 5.Rf1 Sf3 6.Rg1 e5 7.Rh1 Sg1 8.Sg5 f3 9.Sh3
という解答が1通ありましたが、これは5…Sf3+でチェックがかかっているので、6.Rg1??が王手放置になり、指せません。

【総評】
かめきち:前回中級で17.5点取れてとても嬉しかったので、調子に乗って上級に挑戦してます。
井上徹也:全部解けたつもりですがどうかしら。結果発表が楽しみです。
服部卓磨:3回目になりますが、楽しく解かせてもらっております。だいぶチェスプロブレムに慣れてきました。
☆お三方とも、全題正解でした。おみごと!
たくぼん:今月上級でしたが先月より早く解けました。PGは楽しいですね」

【解答成績】
☆採点は、1題5点満点として、ISC方式で採点しました。
20点ーーKawasemi、服部卓磨、井上徹也、及川弘典、中嶋正和、かめきち
17点ーー藤原俊雅
15点ーーたくぼん、井上聡美
10点ーー神在月生
5点ーーRelax
(解答到着順)

☆半数以上の方が満点という好成績でした。
☆解答応募者の中から、井上徹也さんに、JCPS発行のプロブレム書籍を賞品としてお送りします。