第19回International Solving Contest 参加者レポート

以下に第19回Internatinal Solving Contest カテゴリー1の参加者である黒川智記さん、松山紘也さんよりコメントをいただきましたので、掲載いたします。

黒川智記さん:

ISCには4回目の参加。初参加で記事を書かせていただいたのが2019年でそれ以来の参加レポートとなるが、当時はプロブレム歴2~3か月で2手メイトと3手メイトが多少解ける程度の状態。気がつけば4年程が経ち、今はHelpmateやSelfmateもそれなりに解けるようにはなったものの、Problem Paradiseも毎号解けてはいないくらいの準備不足感もありながら大会会場へ。 まずは前半。第1問の2手メイトは白の駒が多いものの候補手は限られており、難なくクリア。割とすぐに次の第2問の3手メイトへ。

Vladimir Bron, BCPS 1960, 2. HM

Mate in 3

これはキーがぱっと見ではよくわからず、苦戦。正解手である1.Re7自体はすぐに浮かんでいたが、狙いがQg7+~Bg3#という細い筋である上に守備駒も多く、簡単に受かりそうという印象でしかなかった。実際、1...Rxe1と根元を外されると全然ダメに見えていたので読みが止まっていたのだが、しばらくして2.Sb5!という妙手を発見。以下2...Sc4に3.Sd4#が効くという仕組みが気付きにくいが、この手順はいかにもといったところなので正解を確信。黒のディフェンスも多かったのであとは漏れがないか入念に確認して次へ。

Olexey Faizulin, Chess Leopolis 2006, 1. Comm.

Mate in 4

ここでどれを解くか少し迷ったが、第3問は4手と長くない上に駒も少ないので一旦眺めてみることに。逃げ道が多く捉えどころが難しそうなので、まずは1.Se3だけ読んでみてこれがダメなら他の問題を考えようと思った。対する黒の手は5通りあるが、たまたま最初に読んだ1...f4の順がそれっぽく詰むことを発見。どうやらこれが正解とわかったので、あとはしらみ潰しに読んで解答し、思っていたよりもあっさりと突破。問題としては簡素な図であまり派手な手もなく、どちらかといえば普段Problem Paradiseで見かけるような手順という印象を受けた。

続いて第6問のSelfmateに挑戦。動かせる駒自体があまりなく、キーもわかりやすくて解きやすい問題だったように思う。キーに対するスレットだけがやや発見しづらかったが、比較的容易に解くことができた。 次は第5問のHelpmate。

Alfred Gschwend, Schach-Echo 1970, 1.Pr.

H#5 b) Pb3 -> c3

とりあえずパッと見でわかるのは、a2に怪しげなポーンがいることと、黒キングを詰ますにあたってはe5のポーンが直進出来ないのでどこかにずらしてプロモーションしなければいけないことだ。1手でずらすことはできないので2手かけてd6、d7またはf6、f7にずらすことになる。詰み形もよくわからないながらしばらく眺めているうちに、e7のポーンを取ってe8=S~Sf6とすれば一応詰んでいることに気づくが、ずらすために何か黒は1枚捨てているため、捨てた駒の穴埋めをしないことには前述の形は実現しない。しかしここでa2のポーンの存在を思い出し、何かうまく使えないかと考えてみたところBf6~a1=B~Bh8というピッタリな手順を発見。これならばツインとなっているbの方も同じように何か捨てて穴埋めする形になるであろうということが想像でき、Qxd2~Qd6という手順は容易に発見することができた。ギリギリの上手い手順でとてもいい問題と思う。

今までにないスピードで解答が進み、残るは第4問のEndgame。OTBをやっていない私としてはEndgameは大の苦手ジャンルであり、考えてもわからないので例年でも1問にかける時間は最大でも10分程度というところ。今回は前半120分のうち25分を残して他の問題を解き終わっていたためここで多くの時間を割くことができたが、これがかなりの難問で世界でも5点満点の解答者はいなかったよう。ただし部分点は取りやすかったようで、2点取ることができたので時間をかけた甲斐があった。

続いて後半。第7問の2手メイトは狙いが定めにくく、確認も含めて10分ほどかかってしまった。 第8問は3手メイト。

Erling Myrhe, Trollhättans Schacksällskap 1934, 1.-2. Pr.

Mate in 3

とりあえず配置がややこしいので駒の利きを確認して狙いを探すのに精一杯。しばらくして1.d6としておいてe5のビショップを左から持っていく筋があることに気づく。なんとかキーを探し出したという感じだが、終了後に若島さんの解説を聞くとa3のビショップとb5のナイトがいるので、両方の利きに捨てる1.d6は「これしかない」らしい。言われてみればなるほどだが、まだここまで直感が磨かれていないので多くの作品に出会って経験を積んでいかねばと感じた。またこの問題ではナイトがf5に来る手順があるが、eとhにそれぞれナイトがいることを見落として表記ミスで1点減点。ケアレスミスだが、ここも経験不足を感じるところ。 次は第11問のHelpmateに挑戦。4解だが、見るからにそれぞれの解に関連性がなさそうな感じがするので、なんとか2解だけ発見したところでひとまず第12問のSelfmateに挑戦。

Gennadi Kozyura, Pushkin 200, 2000, 3.HM.

S#4

最初に浮かんだのはf6のナイトを動かし、黒がビショップを動かしたらBb7+~Bc6+~Qc8+としてRxc8#となる順。この手順はピッタリなので出てくるだろうということでいろいろ読み始める。しかしいくら読んでも他の順が解決せず全然わからなかったが、実は前述の手順は全く関係ない紛れだった。正解は1.d7!という手。理由があってこの手を読み始めたというよりは読んでみたらQxb5+~Sfd5+があるということに気づいた感じだが、この初期配置から黒キングをc7に追い込む順は非常に見えにくく、キーの発見に一苦労。ここさえ発見できればあとの変化は多いわけではないので問題なかったが、非常に難しかった印象。

第12問を解き終えて残り10分。最後に第9問の8手メイトを少しやってみたが、入りが全く浮かばずに終了。n手メイトは手数が長いものは大体シングルラインになるので解きやすさはあると思うが、さすがに10分では無理なのでHelpmateの残りの2解を探すか、Endgameで少し部分点をもらいにいっても良かったかも?と少し反省。 これで前後半とも終了し、前半27/30点、後半16.5/30点の計43.5/60点という成績で初めて優勝することができた。後半はそこまででもないので前半は運が良かったというところもあるが40点台は日本人参加者では過去でも少ないようで、好成績での優勝は嬉しい限り。とはいえEndgameはもちろん、第9問のようなn手メイトの長めの問題はあまり解けたことがないという状態で伸びしろもありそうなので少しずつ練習していろいろな問題を楽しめていけたらと思う。

松山紘也さん:

先日のISCは私にとって初めてのプロブレム大会でしたので、3位という結果を取れたことに自分でも驚いています。元々試験を解くことが比較的好きなタイプだったので、本番は楽しみながら挑むことができました。4番のエンドゲームの解答が途中で棋譜を間違えていることに終了直後に気づいた時は絶望しましたが(笑) 8番の3手メイトが信じられないくらいするすると解けて、上手く巻き返せました。
この度は運営の皆様、ありがとうございました。ぜひまた来年も参加したいと思います。