☆新しく開始した「今月のプロブレム」、1月分の初級篇には、12名の方々から解答をいただきました。まだまだ認知度が低い本欄ですが、プロブレムを解いてみようかと思う読者を少しずつ増やしていけたらと思っています。
☆なお、本欄ではキング=K、クイーン=R、ルーク=R、ビショップ=B、ナイト=S、ポーン=Pという表記を用いることにします。プロブレムでは、ナイトライダーというフェアリー駒にNの文字を当てるのが普通で、そのためナイトはSと表記する慣習になっています。
初級1George E. CarpenterDubuque Chess Jourmal 1873 #2
white Rc2 Qf3 Kd6
black Kd4
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1.Qh3! ☆このキーを答えれば正解です。以下は、 1...Ke4 2.Rc4# 初⼿に1.Qe2?などではステイルメイトになりますので、⿊のKに逃げ道を作ってやらなければなりません。そのときにメイトになる形を探す問題でした。 変寝夢:Qg3では詰まないんですね。 ☆1.Qg3? Ke4 2.Rc4+では2...Kf5と逃げられて失敗します。 |
初級2Otto WurzburgWestern 1913 #3
black Pa4d6 Kc4
white Sd4 Rf4 Qa3 Kh5
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1.Rh4! ☆この手の意味は、すぐにはわかりません。 黒はパスできればいいのですが、指すことを強制されます。すなわちツークツワンク。 ここから変化は2通りあります。 1...d5 2.Kg4! これでステイルメイトが回避されて2...Kxd4 3.Kf5#までとなります。 ステイルメイトを回避するため、わざわざRを遠くに移動してから、そのラインを自分で切るような手筋のことを、Indian(インディアン……ただし、インドのことです)と呼び、プロブレムでは最も初期(19世紀半ば)に開発されたものです。詰将棋で言えば、いわゆる「ブルータス手筋」が親戚関係に当たります。 もうひとつの変化は、 1...Kd5 2.Qd3! これを放置して2...a3なら3.Qa5#、また2...Ke5なら3.Qf5#です。 たくぼん:1...d5の順はびっくりでした。 ☆その順が狙いですね。 変寝夢:枠組みを崩さないようにか。 ☆流動的な詰将棋とは違って、プロブレムでは初形で枠組みが決まっていることが多いのです。 |
初級3Gyorgy BakcsiProbleemblad 1991 H#2 b) wK → f5
black Bf6 Rg6 Kh7
white Kf4 Pg5 Sh8g8
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a) 1.Bxh8 Kf5 2.Rg7 Sf6# ☆初手に1.Bxh8と白の駒を取るのが、ヘルプメイトではよく見かける筋です。 b) 1.Rxg8 Sf7 2.Bg7 g6# ☆今度は、1.Rxg8と違うSを取ります。こういう対照が、ツインのおもしろさです。 変寝夢:a)駒取りは意外 b)これはさっきのがあるからすぐわかりました。 ☆おっしゃるとおり、ヘルプメイトでツイン(または複数解)の設定になっている作品では、ひとつ答えが見つかると、それがヒントになって、他の答えも瞬時に見つかるという作り方になっているものが多く、ヘルプメイトを解くときの大きな快感源です。 ☆鑑賞の手引きを。a)では黒の2.Rg7がBの利きを消し、b)では2.Bg7がRの利きを消します。このように、黒の駒の利き筋が同一地点(この場合だとg7)でお互いに干渉するのは、Grimshaw(グリムショウ)と呼ばれて、プロブレムに頻出の筋です。 ☆もうひとつ、この問題でおもしろいところを。a)では白が1...Kf5と指しています。ところが、ツインの設定はb) wK→f5。ということは、a)の答えを少し変えて、 「1.Bxh8 ??? 2.Rg7 Sf6#」 という順の、1...???のところに白の適当な手を入れることができれば、それも解になる、と思いませんでしたか? ところが、この順は成立しないのです。白はKを動かしてしまうと、g6に利きがなくなり、2...Sf6#でメイトにすることができません。 たとえば、問題図に白Pf3が加わっていたとしたら、1...f4のような純粋に待つ手を指せばうまく行くんですが。 まとめると、先ほどの順は1...???にパスする手がなく失敗。このパスする手のことをtempo(テンポ)moveと呼びます。こういうtempoが問題になるのも、プロブレムではよく見られますので、憶えておいてください。 |
初級4Ulrich RingHans Hilmar Staudte Die Schwalbe 1965
black Ke7
white Pf7 Kh7
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1.Kf6 f8=R+ 2.Kg5 Kg7 3.Kh5 Kf6 4.Kh6 Rh8# 変寝夢:Rに成るのはすぐわかったが、8の段で詰ます事ばかり考え難渋した。逆算で何とか解けました。 ☆チェスのルールを知っていても、PはQに成るものだと思いこんでいる人は意外に多いものです。実は、PはRにも、Bにも、Sにも成れます。こういうQ以外の駒に成ることを、underpromotion(アンダープロモーション)と呼びます。詰将棋で言うと、「不成」が近いでしょうか。 ☆この問題のポイントは、1...f8=R+とRに成るunderpromotionです。それでは、どうして1...f8=Q?とQに成ってはいけないのか? その理由は、Qがh6に利いてしまうので、4.Kh6が指せないからです。ステイルメイトには関係なく、underpromotionが成立するのも、ヘルプメイトのおもしろいところです。 |
【総評】
たくぼん:まだまだ時間が掛かりますが楽しく解図できました。
変寝夢:3番からがめちゃくちゃ難しかった。昔の作家の人、検討力すごいなぁと率直に思いました。
かめきち:将棋指しで、プロブレム初心者です。符号の書き方があっているか自信ないです。詰将棋の感覚で楽勝だと思いきや、むしろマイナスに働いた気がします。これからも初級問題があればチャレンジしてみたいです。
☆符号の書き方については、今回の問題の正解手順を参考にしてください。詰将棋慣れした人には、むやみにチェックをかけないプロブレムに慣れるまで、多少時間がかかるかもしれません。
吉田彰:とりあえず解けた分だけ解答をお送りします。よろしくお願いします。
【解答成績】
☆採点は、1題5点満点として、ISC方式で採点しました。
20点ーー藤原俊雅、たくぼん、Kawasemi、及川弘典、中嶋正和
17.5点ーー変寝夢
15点ーー井上聡美、吉田彰
5点ーーRelax、かめきち、神在月生、羽毛布団
(解答到着順)
☆1番は全員正解で、喜んでいます。
☆2番の#3がいちばん難しかったようです。
☆解答参加者の中から、Kawasemiさんに、JCPS発行の『チェス・プロブレム入門』を賞品としてお送りします。